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『空腹の夕食』完読!最終話の感想

友だちに誘われて登録したLINE漫画で、いろんな漫画を読み漁っている。

追いかけていた『空腹の夕食』をやっと読み終えたので感想をば!!

空腹の夕食|無料マンガ|LINE マンガ

内容をざっくり言うと、高校生たちの恋愛物なんだけど、キャッキャウフフさがあんまりなくて読みやすかったー。

そして恋愛の持つ泥臭さがふんだんに散りばめられていて、僕はこの作品が大好きだ!最終話は思わず課金してたし(どハマり)

大切な人を大切にすることの難しさ、好きな人に自分の弱い部分をさらけ出すことの恐怖など、心の柔い部分がみずみずしく描かれている。

あとタイトルが食にちなんでいるだけあって、作品の中にはめちゃくちゃおいしそうな料理がこれでもか!というほど出てくるのもいい。

原作は韓国なので、韓国料理が多め。そして韓国料理やフライドチキン、餃子、カレー、ケーキなんでも食べたくなる漫画。夜中に読んではならぬ。

感想(説明ナシのネタバレあり)

人間は好きな人には幼稚な感情を持つ。主に独占欲なんだけど。それから「この人によく思われたい」という見栄。「もっと近付きたい」と思うが故にバグる距離感。

切ないシーンも嫌な気分になるシーンも多いけど、読後感がさわやか~。

服美

陰キャ。中学時代は地味な見た目でいじめられていた。高校デビューした子なので、初期はスクールカーストを気にしたり、他人を見た目だけでアリかナシかで判断するところがあった。

けど饅頭や翔太との出会いで、すんごい変わった。悔しさや悲しさ、やるせなさ、惨めさをバネにしていける強さがある。あとうまいもん食わしておけば大丈夫。そういう安定感が服美にはある。

憧れの盛大と付き合い始めてからは、メンタルのバランスがうまく取れなくなって、若干メンがヘラってしまうけど。

最後の「好きでいたかったけど、努力する度に離れていく気がした」のセリフがレバー打ちくらいの破壊力があった。

「好きでいたかった」の言葉が重い。好きだった人のことが好きじゃなくなっていくあの感覚、キツイよなぁ……。

女性同士の格付けだとか、クラスで目立つ女子グループに入っておけば安心だとか、やたら生々しい感じを描くのが作者(ノリとタマゴさん)めちゃくちゃうまい。

その呪縛にがんじがらめになり、紆余曲折を経て解放されて、自分らしさを見つけていく過程が丁寧に描写されてるのが服美だと思う。

初期の頃はクソガキだと思っていたけど、後半はいい子(⟵社会や大人が求めるそれではなく)になった。誰かのために泣いたり怒ったりできるって、すごい事だ。

あと揉めていた子でも関係を切らない強さがあって、シンプルに尊敬した。美寿の取り巻き(民恵と優奈)に嫌な思いをさせられていたのに、それでも友人になれる柔軟さよ。これは民恵と優奈の柔軟さもいい具合に噛み合った結果、みんなえらいと思いました(小学生の感想)

服美は中学時代、親友に縁を切られた悲しい経験があるせいか、むやみやたらに人との関係を断つことをしない。そこも服美の強さだと思う。

饅頭

見た目も性格も我が道を行くタイプ。ひっつめ髪、分厚いメガネ、化粧っ気なし、ふくよか体型──のため、クラスからは浮いている存在。高校生にしてひとり暮らし中。

食べることが好きで、料理も好き。今まではひとりで食事をしていたが、ささいなきっかけから服美と食事を共にするようになる。服美の価値観を変えた張本人。

饅頭がいなかったら、ただの恋愛ドロドロ漫画で終わっていたかも。

大好きな漫画のキャラに似ている翔太のことを好いていたけど、告白する前にふられてしまう。

おいしいものを食べて、好きなことをして、相手のことを気遣いつつも自分のことも大切にする──そんなセルフメンテをちゃんとできる饅頭はすごい。

ただ饅頭の場合は、自分で自分を癒すしかなかった環境にいたから、複雑な気持ちにもなるけれども。

基本「自分は自分、人は人」と割り切って考えている饅頭だけど、服美が盛大と付き合い始めて一緒にご飯が食べられなくなったり、遊びに行けなくなったりした時はヤキモチを妬いてすねてた。そのシーンを読んで、なぜかホッとしてしまった。

盛大

学年トップの王子。顔も頭もいい上に、スポーツもいけるという天が三物を与えたと言っても過言ではない男。

親が成績しか見ず、しかも過干渉タイプ。小言をぶつけられないように先回りする思考と行動が身に付いており、その性格が服美との交際に多大な影響を与えていた。

欲しいものを手に入れるためなら、汚いこともやるズルさも持ち合わせている。そのズルさは服美と付き合う際にいかんなく発揮されたが、根はただの不器用。自己肯定感がほぼ0。負けず嫌い。

言葉で翔太をボコして服美から遠ざけようとしていた策士。服美と付き合うために饅頭と仲良くする策士。

こうして書くと、盛大がめちゃくちゃ嫌な奴なんだけど、悪い奴ではないのよ……。ただ服美との関係を維持するのに必死なだけで、漢気を見せる時もあったんだよ……。

が、親や勉強、自分自身に対してのストレスから逃避するために服美を利用していた感じもする。盛大本人にその自覚はないし、盛大なりに服美のことは大事にしていたんだけど。

物語終盤のクリスマスデートのときは、盛大の余裕のなさが炸裂したと思う。

他人と深く関わった経験がない故の無神経さと無遠慮さ、傲慢さが徐々に露呈していった感じ。

盛大はなぜあそこまで「俺>>>>>饅頭」と思い込めたんだろう。恋人か親友かの2択を迫るのはやりすぎ。饅頭が盛大の代わりになれないように、盛大だって饅頭の代わりにはなれない。もし自分が饅頭の代わりになれると思っているのであれば盛大は傲慢だ。服美にとってはどっちも大事な存在だろ。

饅頭が遠くに引っ越して落ち込んでる服美に、クリスマスデートを楽しめって言う方が無理。

そこに考えが及ばなかったのは若さのせいではなくて、もう盛大の考え方に原因があったとしか言えない。

けどなぁ……盛大は盛大なりに服美に楽しんでもらおうとクリスマスデートプランを一生懸命考えてたんだよな……と考えると切ない気持ちになったり。

オシャレな洋服を選び、映えるディナーの店を選び、盛大なりにやれることはやってたんだけども、あの時の服美が欲しかったのはオシャレなカップルコーデでクリスマスの街を歩くことではなかったと思う。

食べたかったのはインスタ映えする料理じゃなくて、うまく仕上がらなくても2人でわちゃわちゃしながら作った料理と饅頭がいない辛さ、やるせなさを語り合える人だったんじゃないか。

でも盛大にそうしろと言うのも酷な気がした。だって好きな子ができても美寿に邪魔されて潰されて彼女を作れなかったから彼女の気持ちなんて分からない。友だちやクラスメイトは完璧王子の盛大しか見てないから、気の抜き方も分からないだろう。

まだまだ「服美にいいところを見せたい!ダサいデートなんてできない!嫌われたくない!」って時期だったんだと思う。でも「誰のためのデートだったんだ?」と考えると、やっぱり服美よりも盛大自身の満足が優先していた気がする(服美に好かれる努力ではなく、嫌われない努力になってる時点で関係は変質してたんだきっと)

優しさはあるんだけれども、肝心なところで残酷な人ってのが、盛大かもしれない。

あれほどそばにいた美寿を、何のためらいもなく関係をぶった切ったときはちょっと驚いた。まぁそれほどのことを美寿がやらかしたんだけど。

自分に害のある人間は切る、という考え方には賛同するけど、美寿って盛大にとってそんなに軽い人間だったんだろうか。

とにもかくにも心の底から安らげる時間もない、それを共有する人もいないという気の毒な子だった。

翔太

3年間ひたすら服美のことが大好きだった男。漫画初期の頃は身長低め、学力低め、包容力低めの全体的低め男子だったのに、中盤あたりからググッと色んな部分が伸びてきた。

饅頭、服美、翔太はよく3人でご飯を食べていて、この3人のシーンが1番好き。気の置けない友だちってこういう事を言うんだろうなって思う。

そんで饅頭の好きだった人。自分への好意を敏感に察知し、先手を打って饅頭に「ごめん」と言って振る。

別に饅頭が嫌いな訳ではなく、むしろ大事な人だと思っている。翔太は服美が好きなのと、饅頭の大事さは色恋のそれとはまた違っていたんだろうなと読んでて思った。

『饅頭に好きと告白させる前に振るなんて、翔太ってずるい』とレビュー欄で言われていたけど、饅頭が真正面から告白して翔太に振られることにそれほど重大な意味ってあるんだろうか?

恋愛にもマナーがあるのは理解してるんだけど、マナー講師みたいな「相手に不快感を与えないための正しいお作法」みたいなのが苦手。ていうか「私の考えたお作法に沿わない人はマナー違反」ってぶった斬るのがどうにも……。

僕としては、翔太なりの精一杯なやさしさだと思った。

好きとアピールをされても気持ちに応えられない、面と向かって告白されたところで「俺も好き」とは言えない、大事な饅頭を傷つけることになる──の集大成が「ごめん」の一言だったんじゃないかなぁと。

それでも友人関係を崩さず、むしろグレードアップさせた饅頭と翔太の懐の深さよ。この2人、長年使ったタオルケットみたいな気遣いができてすごい(語彙力)

無邪気な少年から青年になっていく翔太を見ているのも楽しかったです、はい。いつの間にか恋の駆け引きできるようになったんだね、翔太(何目線)

翔太の母親もなかなか曲者で、学力の低い翔太よりも成績のいい兄を優先してたから自己肯定感が低いし、「どうせ俺なんて何やってもダメだよ(逆ギレ)」というやけっぱち状態だった。救いは、翔太の兄だけは翔太を見捨てず、さりげなくフォローし続けていたこと。

勉強面でも恋愛面でも相談にずっと乗っていたし、兄弟関係がこじれなくて本当によかったよ……。

翔太は自分の強いコンプレックスを、自分自身の力で克服したのがすごい。

すごいヤツだけど服美にだけは意地悪言っちゃう純情ボーイ。

でも服美が本気で落ち込んでいるときに必ずそばにいた。饅頭が引っ越して行ったとき、盛大との交際で行き詰まったとき、服美が1番欲しているであろう空気感や温度感で励まし続けてた。

たぶん母親の影響なのかな。誰も気が付かないような、ないがしろにされがちなネガティブ感情を拾って寄り添うのが翔太は抜群にうまい。

服美が翔太の気持ちに応えるのがもうちょい遅かったら、他の女性にかっさらわれてたかもしれないなって思った。

美寿

幼なじみの盛大のことがずっと好きで、ダイエットに勤しみ、ヘアメイクにも余念がない天然美人の極悪キャラ。服美にめちゃくちゃ陰湿なことをやっていたから、最初は嫌なキャラだなぁと思っていた。

盛大に近づく女子を裏で蹴落とす、ハブられるように仕向けるなど、そんなイジメのテクニック誰から習った?と聞きたくなるような性格──なんだけど、たまに筋の通ってることを言うので真っ向からクソガキと思えない不思議な人物でもある。

美寿の親も、盛大の親と同じく子どもを頭から押さえつけるタイプで、付き合う友人の事ですら口を出す。美寿をテストの数字でしか判断しなくて、美寿本人にも人格や心があるってことが頭から抜け落ちている。

饅頭が美寿に貸した漫画を、「あんなくだらないもの」と言って親が勝手に捨てたシーンは腹立ったし、こんな親父がいたら歪むわ!と思った。母親も似たような感覚で、見た目が劣る(と母親が勝手に思ってるだけだけど)から「あの子と付き合うのはよしなさい」って饅頭の事を小馬鹿にしてんのもムカついた。

あの意地悪さは美寿なりの自己防衛なんだろうと僕は思う。ただその防衛ラインの基準が親になってしまっているから、平気で友だちを蹴落とすんだろうなーって。

ただ子どもにとっての親は絶対的な部分があるから、歯向かえというのは酷だ。しかも饅頭と美寿は大の仲良しという訳でもないし、そこまで美寿には求められない。

ていうか、美寿が饅頭に近付いたのは、服美と盛大を付き合わせないために、饅頭に取り入って自分の手駒にしようとしたからなんだけど、まさか2人が絡むとは思ってなかった。

物語後半で饅頭と関わってから、少し態度が軟化したのがびっくり。値踏みされない関係で、美寿の心も少しほぐれたみたいで安心した。目的があって饅頭に近付いたのに、予想以上に居心地がよかったんだろうと思う。

美寿と饅頭は深く仲良くなることはなかったけど、それでも美寿が生きていく中で大切な想い出になったんじゃないかと思う。安心してまったり過ごせる相手は、リアルでもネットでも貴重だし。

饅頭が引っ越してしまう前に、「ありがとう」と「ごめんね」をLINEで送れた美寿を見たとき「美寿も強くなったなぁ……」とちょっとうるっと来てしまった。

イジメの主犯だったし、友だちをハブるし、人を小馬鹿にして遊ぶ最悪の性格だったけど、自分の中でなんらかの変化があったんだろうな。

最後は新しい友だちを作って、穏やかそうな顔になっていたのがよかった。

最後まで美寿と服美が仲直りしないところも好きだった。喧嘩する訳でもなく、静かにおたがい離れていったのがリアル。

盛大のことも吹っ切れたのか、そこは分からないけど。

損得や利益のみで付き合う友達を選んでいた美寿が、同じような考えを持つ盛大に絶縁されたのは皮肉だと思う。盛大だけは私の事をわかってくれるって信じてたんだよね、きっと。

番外編で美寿と盛大の現在編とか描いてくれんかなぁ……別にくっつけとは思わないし、発展してほしい訳でもないけど、美寿と盛大のその後が本当にうっすらとしか描かれてなかったから読みたい。

美寿と盛大が親の呪縛から逃げられたのか、楽しく過ごしているのかどうか、そこが知りたい。

作者のノリとタマゴさん、ぜひ番外編を~!課金しますから~!(ㅅ༎ຶ⌑༎ຶ)