衆議院東京15区補欠選挙の三日前、友人から数ヵ月ぶりに連絡がきた。
その内容は「日本が危ないから、今度の補欠選挙は日本保守党の飯山あかり候補に投票してほしい。母が見ていたYouTubeを一緒に見ていたら、私も日本保守党に賛同する気になった。15区の人と言ったら、あなたしかいなかったから連絡した」というものだった。
支持政党や思想の違いがあるから衝撃を受けたのではなく、友人が選んだ日本保守党の公約や各党員のX上でのポストを読んだり、無責任な振る舞いを見たりで、かなり引いてしまっている。
なぜ僕が引いたのかは下記のポストを参照していただきたい。
Xでの批判的ポスト
TwitterJPの笹本裕社長によると、百田尚樹のこのツイートは「ポリシーとルールに違反していない」らしい。
— 大神 (@ppsh41_1945) December 4, 2020
Twitterルールで「民族や出身地などを理由にしたヘイト表現を禁止する」とあるのに、百田尚樹のこれがルール違反じゃないってあり得ないだろう。#ツイッタージャパンにコンプラはあるのか pic.twitter.com/iaGFFt28y9
2018年にお茶の水女子大学の話題から「自分も女子大に入れる」とトランスジェンダーを揶揄した百田尚樹は、同様に理解増進法についても差別デマで攻撃を続け、いま日本保守党という政党の顔を持つに至りました。政策を議論する場に、差別を持ち込む存在が増えては困りますね。 https://t.co/c2rC3zWroO
— gaku_taniguchi (@gktngc) April 21, 2024
イスラエルのジェノサイドを擁護し、外国人ヘイトを巻き散らし、批判者は片っ端からブロックする飯山あかりがナウシカと並び称するなどおぞましいにもほどがある。#ナウシカ #風の谷のナウシカ #スタジオジブリ#飯山あかり #日本保守党 #東京15区補選 https://t.co/4NQLTkTgQW pic.twitter.com/1Y6kDoKGS3
— Kai@情報収集垢(仮) (@otaota098) April 26, 2024
飯山さんが
— 和田 哲 🏴☠️🌈🕊️wada_opinion (@wada_opinion) April 23, 2024
①政治の素人で江東区でも活動してなかった
②有本さんに言われて立候補した
③さまざまな知識が浅く、デマもある
④選挙ルールも守らない
⑤中東研究者としてもデマを拡散
⑥中東専門家へ根拠のない誹謗中傷をしていた
⑦偏った中東情報発信
でも投票できる感覚がすごいと思う。
百田尚樹は自分の支持者を「善良なバカ」と呼ぶんだな。 https://t.co/Nc9kbKhRFL
— たかちん@ENKL卒業生‼️ (@takachin416) November 14, 2023
日本保守党の百田代表
— maku (@maku94483) April 21, 2024
「まあ証拠はないんだけど」
「中国から最も金を貰っているのが岸田文雄です」
「河野太郎の会社は中国の人民解放軍が作った会社と、50%ずつの出資で合弁会社を作っている」
「林芳正は金より女かも」
証拠がないのに、党首が街頭演説でこんなこと言っていいんですか?#東京15区 https://t.co/QE1DXYgsLL pic.twitter.com/0bIz14Zmsi
PULPさんの「有本香 情報整理」を読むと,有本香のデマ(誤解を含む)により,日本社会を混乱させてきたかがよくわかる。そのデマが情弱保守を煽り,日本の言論を誤った方向に歪めてきた責任は極めて大きい。過去の発言の誤りを気づいても訂正しない点が一番の問題だろう。 https://t.co/XrMIKEHSPO
— 木霊2 (@edmsedms2) March 3, 2024
ここらの話は、Xで日本保守党に批判的なユーザーのポストやリポストをもっと掘った方がわかりやすいと思う。
党員や支持者のポストも一通り閲覧してみたが、党員や所属している人への礼賛や愛国ポエムのポストや、他政党を支持する人への罵倒ポストが多く、どうにも読み進める気力がなくなり、そっとXを閉じてしまった。
一番最後のポストに書かれているPULPさんのnoteが、有本香氏が自ら拡散したデマ、または誰かのデマを拡散している様子、他の国会議員や著名人とのトラブルなどを細かく検証している。
有本香氏だけではなく、日本保守党がどのような層をターゲットにしているのかもわかるはず。
党首の百田尚樹氏が「知らんけど」と予防線を張りつつ過激なポストをしているのは、他の人のリポストでよく目にしていたが、まさか選挙運動でも似たようなことをやってるとは思わなかった。
「証拠はないんだけど」で言いたい放題やられる側はたまったもんじゃない。
その「証拠のない妄想」を持ち上げる人がいて、まるで事実のように拡散されていくことの恐ろしさ。
友人と友人母の情報源がYouTube一択になっている点にも引いている。あなたへのオススメで関連する動画やその人が好みそうな動画が芋づる式に出てくるので、片っ端から視聴しているのだと思うが。
フィルターバブルの兆候はコロナのときからあった
友人が「母親がYouTubeでコロナワクチンのことを調べてて、打ちたがらないんだ」と言っていたことがある。
ワクチンを打つ・打たないは個人の自由だと思うし、打たない選択をすること自体にはネガティブな気持ちはない。打ちたくて打つ人、打たざるを得ない人、打ちたくなくて打たない人、持病や懸念で打てない人がいるのは不自然ではない。
だが、コロナワクチンには「人口ヒドラ(マイクロチップやホワイトクロット、寄生虫バージョンもあり)が混入している」だの「人類の選別作業のために支配者層がコロナワクチンを打たせたい」だの「オリオン座のレプリティアンがコロナワクチンに寄生虫の卵を混ぜて、集合意識を乗っ取り人類をコントロールする」だのと言い出したらさすがに止める。
友人母がどの動画を見てコロナワクチンを打たない選択をしたのかは不明だが、ぶっとび方面の動画に影響されていないことを祈っている。
このあたりの友人は「ソースがYouTubeだからね、鵜呑みにはしていないよ」と言っていたのだが、自分に刺さるトピックだとソースがYouTubeでも問題ないようで……。
というか日本保守党の何がそんなに刺さったのかが気になる。
同類の動画を延々とおすすめしてくるYouTubeサイドにも問題がある
フィルターバブルと先鋭化した考えは相性がいい。
誰も表では言えない「ホンネ」が動画でアップされているし、賛同者がコメントしているし、「こうやって考えているのは自分だけじゃなかったんだ!」と仲間意識が芽生える。
そのホンネが、排外的だったり、ヘイトだったり、陰謀論だったり、過激な思想だったり、一般的には受け入れられない内容であればあるほど、フィルターバブルが強化されやすい。
陰謀論者や地球温暖化否定者のYouTubeレコメンデーションには、何が表示される? フィルターバブルを“体験”可能にする「TheirTube」 | WIRED.jp
YouTubeのレコメンデーションエンジンはあなたの嗜好を視聴履歴や検索ワードから捕捉し、あなたが見たいと思うであろう映像を提案することに長けている。
このレコメンデーション機能は便利である反面、使用者の価値観に合う情報しか提示せず、それと異なる情報は自動的に遠ざけてしまう側面がある。このような状況は、それがまるで片寄った情報しか通さないフィルターの被膜の中に閉じ込められているようであることから「フィルターバブル現象」と呼ばれ、さまざまな批判を浴びてきた。
おそらく友人たちは、日本保守党関連の動画からいろいろなデマや差別心を煽る動画も見ていると思う。
オススメ機能で湯水のごとく流れてくるだろうし、今こうして僕がブログを書いている間にも、日本保守党の動画を見ているはず。
もうこうなってしまうと、誰が何を言おうと無駄だ。
「日本保守党を支持しない奴は反日左翼」とか「日本保守党が当選すると都合が悪いの?」とか「日本保守党以外に入れるなんて日本を壊したいの?」とか、そういう風に受け取られてしまう可能性が大きいので……。
あまり深入りしたくないのが正直な部分で、飯山あかり氏が落選した日から友人にメッセージを返していない。確実に江東区民をディスってくるのが目に見えてるから。まぁ僕は飯山あかり氏には投票しなかったのでディスられても仕方ないかもしれないが。それでも「今連絡したらかなり面倒くさそうだからスルーしたい」という自分の心に嘘はつけない。
一水会のポストが心にしみる……。
X(旧ツイッター)での「いいね」が常時1万件を超えたところで、それが有権者の投票行動に直接反映されているわけではない。SNSで「みんな同じことを言っている」と感じたなら、一度自分がエコーチェンバーの中にいないか、フィルターバブルで目が曇らされていないか、立ち止まって考えてみることだ。
— 一水会 (@issuikai_jp) April 29, 2024
政治の「せ」の字も言わなかった人がYouTube動画で目覚めてしまう危うさ、ネット上での人気と現実はイコールではないんだぞ
僕の心情を的確に表してくれているポストがこちらです。
政治に興味が無いのは良くないと言いますが、しかし「今まで政治に興味なかったけど、YouTubeで政治に興味を持って保守党に投票しました」、みたいな、いっそずっと興味もたない方がまだマシだったなって人もいますからね。
— 愛国心はなまけ者の最後の逃避場 (@UniButterPasta) April 30, 2024
政治に興味を持つのはいいことだとは思う。
YouTubeで政治に目覚めるのも百歩譲ってアリだと思う。
ただそれはソース元がきっちりしていて、なおかつフラットな目線で編集しているYouTubeなどの話であって、各方面からデマの訂正やヘイトへの批判を受けている政治団体のYouTubeで感化されるのはいただけない……。
日本保守党、飯山あかり氏はネット上では人気が高い。しかしそれはあくまでもネット上だけの話。さらに言えば、ネット上でも特定の層に人気が高いだけ。
「ネットの力(笑)」とやらがいかにアテにならないか、これでお分かりいただけましたでしょうか。 pic.twitter.com/D9nrjDsB7C
— アームズ魂 (@fukuchin6666) April 30, 2024
飯山あかり氏が落選したのを知ったとき、僕は田母神俊雄氏が都知事選で落選した時のことを思い出した。
今回の補欠選挙と同じく、ネットでの投票予想と実際の得票数がまったく違っていたのだ。
ちなみにネットでは一位、現実では最下位の得票数。
「田母神閣下と持てはやされていても、所詮はネットで騒いでいるだけなんだな」と思った。
この田母神俊雄氏も、やはり嫌韓嫌中、男尊女卑、ジェンダー関係に否定的な保守思想の人だった。
なぜこういう保守(と一括りにしてしまうのは、差別を是正しようとしたりデマをちゃんと指摘したりするまっとうな保守派の人達に失礼だけれど)は人気があるのだろうか?
この都知事選のときも、自称保守の知人から田母神俊雄に投票してくれと言われた。入れる訳ねーだろ。
もうね、こういうYouTubeとかまとめブログとかで感化されて、いつもは連絡してこないのに投票のお願いだけされるの本当に嫌いなんですよ。あと政治の話だと上から目線になる人も本当に嫌いだし、ネットでデマを撒き散らしてるアカウントを盲信している人も本当に嫌。攻撃的で汚言ばかり吐いてきて話が通じねぇんだもん。
以下、フィルターバブルとかヘイトスピーチとかネット人権侵害とかレイシズムとかの書籍いろいろ
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